83 不二見人形

甲斐とはアイヌ語のカヒで、山地多く物を背負つてゆく意である。
富士も矢張りアイヌ語のフチから來た當字で不二、不死、不盡とも書かれてゐる。フチとは火の神、火の姥母の謂である。昔から若い人は外に出て働き、老母が火の番をしてゐることから、火は女性でシンボライズされてゐる。
富士のマスコツトが木花咲爺姫であることも、この點からうなづける。
この人形は吉田地方の製作、登る前の憩か、下山後の憩かその點は知らないが、何れにしても表情、服裝、姿態から靈峯富士への憧憬がよく現はれてゐる。

(古谷茂男)


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