58 稻積神社の太皷橋

遊龜公園内にあり、宇氣母智之命を祭神とし、養蠶農事の神として、縣民一般の崇敬の的となつてゐる。
前に見ゆる太皷橋の欄干にもたれて、池の面に目を落すと幾百とも知れぬ鯡鯉眞鯉が神の使そのものゝ如く、浮世のけがれをよそにしてのび/\と泳ぎ廻つてゐる。
例祭は五月二、三、四日で正木さんと稱し、全市をあげての賑ひである。農産の神だけに農具、種物、苗物等を商ふ店が軒をつらねてゐる。
ことに近年植木市としての縁日は、全國まれに見る所である。

(白砂三郎)


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