14 古書の泉

いんぎんな面持ちで舞鶴城の池端に立つてゐる、この古典的な建物が汲古館と稱せられ、古書の寳庫である。其の藏書の多いこと、貴重品の多いこと、天下稀に見る私設の圖書館として數へられてゐる。昨年文部省主催の郷土教育講習會の際は、日本全土に亘る多數の會員が親しく見學された。甲府市村松甚藏氏の經營にかゝり、この建物の裏には赤い屋根の文化的な閲覽所も附屬してゐる。
春は櫻が、秋は紅葉が、お城の高い石垣を越えてサラ/\とふりかゝる。何んというクラシカラルな美しさであらう。どこまでも古書の泉にふさはしい風景である。

(渡邊正道)


前頁  次頁