5 病院打診

錦町の一角に裁判所と並んでゐるルネサンス式の建物が縣病院で、前通りは電車や自動車が走つて居るが内部は至つて靜かである。
クリーム色に彩られた玄關に、見るからに好々爺然たる爺さんが、出入する人々の面倒を何くれとなく見て居る。白衣の看護婦さんが忙しそうに立働いて居る。窓外には美しく咲揃ふ花園があり、淋しい病院生活をする人々に慰めを送つてゐる。又靜に枕邊に草花を置く白衣の人々の心づくしは、病院のエンゼルとして深く感謝されて居る。病院の脈膊……それは末梢の末梢まで及んでゐる。
此感じは數多くの私立病院に、個人經營の病院に、醫院にそれ/″\の專門[# 原本では「問」となっている]とする所によつて、六十萬縣民の傷病治療に、保健衞生にも遺憾なく發揮され、更に渾身の努力を注がれてゐる。

(數野孝惠)


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