1 停車塲[# 目次では「場」となっている]スケツチ

御嶽觀光、身延參詣、其他甲府盆地のありとあらゆる用件は、この玄關を通じて接捗が行はれてゐる。明治三十六年六月開通の中央線は、昭和六年四月以降電化され、今まで煤煙地獄と言はれた四十幾つかのトンネルは極樂淨土へのコースと變った。
山梨はたしかに日本のスヰスだ。東京へ四時間、靈地身延へ一時間半、京濱より日歸りの好遊覽地としてナンバーワンに數へられてゐる。ポーチの右側に見えるは構内賣店、左側に見えるは公衆電話。
西郡行の山梨電鐵はこゝから三十分毎に發し、開發協會からは縣下各所に自動車が運轉されてゐる。驛前には甲府運輸事務所、國産百貨市場、清水屋、柳屋等の各旅館がある。版畫[# 原本では「畫版」となっている]はリノリウム版で右手の山に少しぼかしが應用してある。

(池谷芳平)


前頁  次頁