染色の技法について 角田幸子(日本現代工芸美術協会正会員)

 染色には、布地を一色に染める「無地染め」と布地に模様を表わす「模様染め」があります。
 模様染めには、直接布地に模様を染める「直接法」と、模様になる一部分を糊やろうで染まらない様にして、浸染や引き染めで地色を染め、模様を表わす「防染法」の2つがあります。(以上注1)
 ここでは作者が使用した方法であります「防染法」に属するローケツ染とシルクスクリーン染について簡単に記述します。

●ローケツ染
 ローケツ染とは熱で溶かした蝋を、筆や刷毛等で布に蝋描きして、蝋のついた部分を染めないで白く残す防染技法の一つです。
 使用する蝋は、木蝋、白蝋、パラフィン等で、表現したいデザインや生地の持ち味によって、単独で又は配合して使われます。
 ローケツ染は白く防染するだけでなく、半防染や亀裂の表現が出来ることが、他の防染技法にはない大きな特長です。
 蝋は油に溶け易いので、染色後に、溶剤やガソリンで洗い落してから蒸し等の染料固着処理をして仕上げます。

●シルクスクリーン染
 型染の技法の一つで、型を用いて量産が出来る捺染方法です。
 スクリーン型には二つの種類があります。柄の部分を切り抜いた彫型と写真技術を応用した写真型です。一品制作をするには、手軽に自由に型紙が切れる、彫型が向いています。染める方法は、まずデザインにそって型紙を切り生地の上に置きます。その上に紗張をした枠をのせ、へらで捺染します。型の組合せにより筆で描いたものとは違った、面白い型が現れます。
 染料は糊(CMC)で濃度をつけ使用します。
 仕上げは染料を固着させる蒸しと糊を落とすための水洗いをし、乾燥させて出来上りです。
 広川青五先生は、この方法を発展させ、新聞紙などを使って型を作る方法、ティッシュペーパーを使ってハーフトーンを表現する方法、またのり筒を使って極めて細い線を表現する方法などの新技法(注2)を開発しました。これらの方法により従来、きもの地などの実用的製品の大量生産に向いていたシルクスクリーン染を、一品制作で芸術的表現が可能な方法へと発展させました。
 伊東けい子はこの一品制作の技法を駆使し、伊東けい子の世界を展開しています。

(注1)美術出版社「基礎技法講座9」「染物の用具と使い方」

(注2)広川青五「蝋纈染の技法」(1979年/理工学社)